098910 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

涙雨

 
 
 お母さんは、僕が2才のときに癌で死んじゃった。

 子供の頃、よくブランコにひとりで乗ってた。

 ひとりでず~っと、こいでた。

 おばあちゃんが家に来た。

 僕の面倒を見てくれた。

 お兄ちゃんとおばあちゃんは仲がとてもわるかった。

 喧嘩ばかりしてた。

 お兄ちゃんは、僕をいじめてた。

 いじめられたけど、なんにもできなかった。

 お父さんは、仕事ばっかりしてた。

 家のことには無関心だった。

 なにを考えてるのかもよくわからない人だった。

 今でもわからない。

 家族ばらばら。

 ちりちりばらばら。

 ちがうと思った。

 でも、なにも言えなくて

 なにもできなくて

 家族みんな不満もってて

 僕も嫌な思い出ばっかり。

 家族は嫌なものだと思っていた。

 ず~っと、嫌だったもん。

 今でも嫌。
 
 おばあちゃんだけは大好きだった。

 とてもやさしい人だった。

 
 おばあちゃんはからだが悪くなって

 誰かが面倒見ないといけなくなって

 子供がたくさんいるのに

 みんなで押し付けあって

 結局、長男の人が施設へ入れて

 ほかの子供たちからお金を取ってた。

 おばあちゃん、かわいそうだった。

 おばあちゃんのいる施設に行った。

 おばあちゃんはとても気の強い人だったのに

 僕の顔を見たら、泣き出した。

 僕も泣きそうになった。

 一生懸命、子供を育ててきて

 その子供たちから、邪魔者扱いされてた。

 
 おばあちゃん、施設の中で倒れた。

 昏睡状態で、集中治療室に入れられてた。

 家に電話がかってきた。

 お父さんが話してた。

 集中治療室で意識のないおばあちゃんをこのままにしておくと

 お金がたくさんかかるんだって。

 そんな話してた。

 次の日、おばあちゃんは死んだ。

 おばあちゃん、聞いてたんだね。

 おばあちゃんに会いに行ったけど

 間に合わなくて

 冷たくなったおばあちゃんのそばに

 ず~っといた。

 はなれたくなかった。

 おばあちゃんになにもできなかった。

 世話ばかりかけて

 なんにもできなかった。

 涙が止まらなかった。

 最後におばあちゃんに言った。

 「ごめんなさい。」

 「本当にごめんなさい。」


 その日は、雨だった。

 涙雨になった。


© Rakuten Group, Inc.
X