涙雨お母さんは、僕が2才のときに癌で死んじゃった。 子供の頃、よくブランコにひとりで乗ってた。 ひとりでず~っと、こいでた。 おばあちゃんが家に来た。 僕の面倒を見てくれた。 お兄ちゃんとおばあちゃんは仲がとてもわるかった。 喧嘩ばかりしてた。 お兄ちゃんは、僕をいじめてた。 いじめられたけど、なんにもできなかった。 お父さんは、仕事ばっかりしてた。 家のことには無関心だった。 なにを考えてるのかもよくわからない人だった。 今でもわからない。 家族ばらばら。 ちりちりばらばら。 ちがうと思った。 でも、なにも言えなくて なにもできなくて 家族みんな不満もってて 僕も嫌な思い出ばっかり。 家族は嫌なものだと思っていた。 ず~っと、嫌だったもん。 今でも嫌。 おばあちゃんだけは大好きだった。 とてもやさしい人だった。 おばあちゃんはからだが悪くなって 誰かが面倒見ないといけなくなって 子供がたくさんいるのに みんなで押し付けあって 結局、長男の人が施設へ入れて ほかの子供たちからお金を取ってた。 おばあちゃん、かわいそうだった。 おばあちゃんのいる施設に行った。 おばあちゃんはとても気の強い人だったのに 僕の顔を見たら、泣き出した。 僕も泣きそうになった。 一生懸命、子供を育ててきて その子供たちから、邪魔者扱いされてた。 おばあちゃん、施設の中で倒れた。 昏睡状態で、集中治療室に入れられてた。 家に電話がかってきた。 お父さんが話してた。 集中治療室で意識のないおばあちゃんをこのままにしておくと お金がたくさんかかるんだって。 そんな話してた。 次の日、おばあちゃんは死んだ。 おばあちゃん、聞いてたんだね。 おばあちゃんに会いに行ったけど 間に合わなくて 冷たくなったおばあちゃんのそばに ず~っといた。 はなれたくなかった。 おばあちゃんになにもできなかった。 世話ばかりかけて なんにもできなかった。 涙が止まらなかった。 最後におばあちゃんに言った。 「ごめんなさい。」 「本当にごめんなさい。」 その日は、雨だった。 涙雨になった。 |